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FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













国防の独自戦略なくして国家の独立なし


─ ミサイルには完全無防備の日本列島 ─


[2017.9.27]




安倍パフォーマンスの道具として利用され続ける北朝鮮問題



 安倍総理は、訪米中の9月20日に国連本部で北朝鮮問題について演説し、「対話と圧力」という従来のような手段では意味が無く、北朝鮮に対しては「対話」ではなく「圧力」のみが有効である事を強調した。

 また安倍総理は帰国後、9月25日の衆議院解散表明の記者会見の中で、「北朝鮮が核兵器やミサイル計画を放棄しない限り、あらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない」と強調し、「民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはならない」と述べた。

 様々な場を利用しながら、安倍総理なりに北朝鮮に圧力をかけているつもりであろうが、実際のところ、口先だけでは何の圧力にもならない。

 北朝鮮当局が、安倍総理の必死な姿を面白がって見ているだけだとすれば、まるで茶番劇である。

 しかしながら日本国内向けには、こうした口先パフォーマンスでさえも有効な選挙戦術になってしまうのである。

 1993年に初当選した安倍晋三氏が、僅か13年という短期間で内閣総理大臣にまで昇り詰める事が可能になったのは、2002年以降の拉致問題に関連するパフォーマンスのおかげであったと言っても良い。

 当時は、たとえ拉致問題の進展が無くても、安倍氏が北朝鮮について強硬な発言さえ繰り返していれば、人気が出て支持者が増えるという現象が生じていた。マスコミも、拉致問題を扱えば視聴率が取れた事もあり、他のニュースを没にしても北朝鮮関連の話題を優先的に扱っていた。

 そうした時代の寵児として、安倍晋三氏が急速に台頭し、2003年には当時の小泉総理の「サプライズ人事」により、安倍氏は閣僚未経験者ながら自民党幹事長に抜擢され、2006年には第1次安倍内閣が成立した。

 1年後には病気で総理大臣を辞任するが、2012年の自民党総裁選では再び総裁に選出され、その年の暮れには第2次安倍内閣が成立した。

 日本の政治家としては、異例中の異例とも言えるキャリアである。

 かくして、「北朝鮮を糾弾すれば人気が出る」という法則を、身をもって学習した安倍総理は、2017年の現在に至ってもなお、何ら解決策を模索する事も無く、「必要なのは圧力」と唱え続けているのである。

 安倍総理にとっては、まさに「困った時の北朝鮮」であり、たとえ内政問題等で行き詰まったとしても、北朝鮮問題をパフォーマンスの道具として利用すれば、支持率を回復することが出来た。

 また、国連演説における「必要なのは対話でなく圧力」という安倍総理の発言は、トランプ大統領も大いに気に入ったらしく、共にパフォーマンスだけでのし上がってきた同類同士が、肝胆相照らす仲になったようである。

 ただし、北朝鮮問題を考える上で忘れてはならない事は、米国抜きで解決不可能な問題である一方で、米国とは根本的に異なる日本独自の地政学的事情が存在する事である。

 もし米国と北朝鮮が戦争になるようなことがあれば、「主戦場」になるのは日本と韓国なのである。

 かつて、日清戦争における主戦場は韓国であり、日露戦争における主戦場は満州であり、日米戦争における主戦場は南方の島々であった。

 このように二国間の戦争であっても、本国同士はいずれも戦場にならず、主戦場となるのは常に第三国である。

 北朝鮮は現在のところ、米国に届くICBMを完成させているわけではないので、米本土は戦場にはならない。

 米国内で、北朝鮮への先制攻撃が選択肢の1つとなっている理由は、「米本土が北朝鮮の射程圏内に入る前に手を打つべきだ」と考えられている為であり、あくまでも米国の国益を最優先させる立場からの戦略である。

 そうであるならば、日本は「日本の国益第一」の立場から、独自の選択肢を策定して戦略を組み立てなければならない。

 建前上は対等の同盟関係なのだから、仮に日本が本土を戦場にしない為の独自戦略を作った場合には、米国も日本の戦略を考慮に入れざるを得なくなる。

 今、国民に信を問うとするならば、この戦略の是非ではないだろうか?

 安倍総理がそうした戦略も考えられないのであれば、「対話ではなく圧力」などと気安く大言壮語をするのはやめてもらいたい。



必要なのは国防の独自戦略


 日本のミサイル防衛システムは、日本近海のイージス艦が艦対空ミサイル「SM−3」で迎撃し、撃ち漏らした場合には地対空迎撃ミサイル「PAC−3」で本土上空で迎撃することになっている。

 日本が保有するイージス艦は計6隻だが、「SM−3」を装備しているのはその内の4隻である。イージス艦1隻につき8基の「SM−3」が搭載されているので、計32基の「SM−3」が日本を守っていることになる。

 これに対し北朝鮮は、日本本土にに着弾可能なミサイル(スカッド、ノドン、テポドン)計250発以上を、2013年時点ですでに配備を完了している。現在では、ムスダンその他が加わり、遥かに大きな数字になっているはずである。

 たとえ最初に発射された32発を全て奇跡的に迎撃出来たと仮定しても、33発目からは、確実に日本本土を直撃することになる。

 それでも陸上配備の「PAC−3」があるではないか、と思う人は、下記の地図を見て頂きたい。


(C)現代ビジネス


「PAC−3」が迎撃可能なのは、上記の赤丸印の範囲内のみである。

 結論を言うなら、日本本土の99%が北朝鮮のミサイルに対して、完全に無防備な状態にあるということである。

 しかも、国内の全ての原発が防衛対象から外されている事は重大問題である。

「PAC−3」は、要するに日本本土防衛というよりはむしろ、在日米軍基地の防衛の為に配備されているだけなのである。

 確かに北朝鮮にとって最優先の攻撃目標は在日米軍基地である。

 しかし実際の戦争の際に、当事者がそのような分かり切った事ばかりやってくれるとは限らない。

 核兵器を搭載しなくても、通常兵器としてのスカッドやノドンで日本の原発を破壊すれば、核攻撃以上の甚大な被害を与える事が可能となる。

 この事態は、日本全土が射程範囲に入った1993年から問題視されていた事であるが、「ピンポイントで目標破壊が可能な技術を、北朝鮮が持っているはずがない」という訳の分からない理由により、議論は終わっていた。

 しかしながら、現在の北朝鮮は昔とは全く異なる高度な技術を保有しており、高性能のGPSを使って、針の穴を通すくらいの正確さでミサイルを着弾させる事が可能になっている。ちなみに、北朝鮮が使っているGPSは日本製で、民生用の通信機器から摘出して転用しているようである。

 日本国内の原発を目標としたミサイル攻撃シナリオは、間違いなく北朝鮮の選択肢に入っていると考えるべきである。

 だが、事ここに至ってもなお、日本政府には原発を守ろうとする様子さえ見られない。

 いざ米国と北朝鮮が戦争状態になれば、米国を支援し基地を提供する日本の本土は、確実に北朝鮮のミサイル攻撃の標的となる。

 つまり、「米国と北朝鮮との開戦は、即日本滅亡」を意味する。

 仮に日米同盟軍が最終的に戦争に勝ったとしても、日本国内の原発がいくつも破壊されてしまえば、戦後復興さえ不可能な事態になっているだろう。

 米国において、手っ取り早い先制攻撃のシナリオが選択肢になっているのは、「米本土は戦場にならない」という安心感に基づくものである。

 たとえ先制攻撃が米国の選択肢であっても、それは決して日本が支持するべき方針ではあり得ない。

 日本国民の生命と安全に責任を負う内閣総理大臣であれば、「自国を戦場にしない」との大原則を最優先にして、防衛戦略を根本から立て直す義務がある。

 一般的に同盟関係の場合、同盟国が攻撃を受けた場合にのみ参戦する義務を負うのが通例であり、同盟国が先制攻撃した場合には参戦義務を負わない。

 例えば1941年の独ソ戦争の際には、日独伊三国同盟があったけれども、ドイツがソ連に対して先制攻撃をした為に、同盟国である日本は対ソ参戦をする義務は無かった。ちなみに、ドイツは日本に対ソ参戦を何度も要請していたが、日本は断っている。

 今後の日本としては、「もし北朝鮮が米国に対して先制攻撃した場合、日本は米国と共に総力を挙げて北朝鮮と戦う」ことを明らかにした上で、「万が一、米国が北朝鮮に対して先制攻撃した場合には、日本は局外中立を守り、協力はしない」と米国に対して明言し、釘を刺しておく事が必要である。

 これだけでも、不測の事態は十分に回避出来るだろう。

 現体制維持だけを願っている金正恩委員長が、先制攻撃をすることはあり得ず、米国が先制攻撃をかけない限り、戦争に発展する可能性は無いからである。

 対北朝鮮政策において必要なのは「圧力」ではなく、「国防の独自戦略」である。

 その上で、安倍総理はトランプ大統領に対しても、言うべき事はきちんと主張すべきである。

 安倍総理が自身の人気取りだけの為に、パフォーマンスばかりを演じているようであれば、国防の最高責任者としての座から直ちに退くべきであろう。














《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
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TEL: 03-5501-3413