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理事長プロフィール
FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」
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「新冷戦時代」としての「令和」
全地球規模での米中対決時代
[2019.5.20]
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2049年に世界一の超大国を目指す中国・習近平国家主席 |
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覇権大国・中国の国家戦略
現在、米中貿易戦争は、互いに報復関税を掛け合う熾烈な状況になってきている。
これは単なる経済問題ではなく、世界覇権を巡る米中間の闘争が本質にある。
中国の習近平国家主席は、「中華民族の偉大なる復興」をスローガンに、世界一の大国を目指す強国化路線を推進しており、それに対する米国の強い反発と対抗意識がある。
2016年以来、中国は2020年を目標にした人民解放軍の大改革を実施しており、ロケット軍のミサイル戦力の増強、海軍の水上艦艇や潜水艦の増強、宇宙やサイバー空間での作戦能力の向上、「北極シルクロード」を含む一帯一路構想に伴う海外軍事基地の拡大等々を、急ピッチで推進している。
習主席が掲げる中国の目標は、経済力や生産力や技術力などの「総合的な国力の増大」を通じて、革命100周年の2049年までに軍事力においても米国を凌駕して世界一の軍を保有し、ユーラシア、アフリカおよびインド洋、太平洋全域における覇権を確立する超大国になることである。
言い換えれば、30年後には、南北アメリカ大陸を除く全地球を、中国の支配下に置くという大目標である。
この長期計画を達成する為に、中国指導部が総力を挙げて推進しているのが、「一帯一路」「中国製造2025」「軍民融合」「影響作戦」といった戦略である。
大規模経済圏構想である「一帯一路 」は、中国の経済的・外交的・軍事的影響力を用いて世界における覇権の確立を目的としている。
中国の海外軍事基地は、現在すでに東アフリカのジブチに置かれているが、「一帯一路」遂行の安全確保の為に、今後さらに多くの軍事基地を世界各地に確保してゆくものと見られる。
中国が2049年における世界一の超大国を目指している以上、中国軍基地の世界展開は必然と言えよう。
当面は、南シナ海の軍事拠点化に力を入れているように見えるが、中国が目指しているのは全地球の支配であるから、局所的な現象ばかりに目を捉われてはならない。
いずれ中国は、中東や東南アジア、西太平洋の諸国に新たな軍事基地を保有し、それらは今後中国が全世界に展開する「方面軍」の拠点として戦略的重要性を格段に高めることになるだろう。
一方で、中国指導部は、軍民両用の最先端技術を開発・利用する軍事ハイテク化政策を推進している。
その目的の為に、中国共産党は、「軍民融合」(Civil-Military Integration)を、国家戦略に昇格させた。
軍民融合とは、民間技術を軍事に適用し、また逆に軍事技術を民間が活用する事で、軍民双方の技術発展の相乗効果をもたらし、「軍事大国」「製造大国」「技術大国」を同時に実現させるという総合戦略である。
中国当局は、軍民融合により、最先端技術である人工知能(AI)や無人機システムなどの開発を推進している。
人民解放軍は、この軍民融合を通じて、2035年までに「軍の現代化」を完了する事を目標としている。
また中国は、国家戦略上の目的の為に、米国をはじめとする海外諸国や国際機関のメディア、文化機関、ビジネス、学会、政治等の分野に影響を与える「影響作戦」(Influence
Operation)を実施している。
人民解放軍は、伝統的に「三戦」(心理戦、宣伝戦、法律戦)を作戦計画の重要な要素とする軍隊であるが、この三戦と密接な関係があるのが影響作戦である。
影響作戦は、軍のみならず、中国政府の各機関が連携しつつ、世界各国において実施されている。
その例証として、中国当局が中国共産党のイデオロギーを様々な国際機関の規程に盛り込ませ、それら国際機関の運営を通じて中国が外交戦略を展開している、という実態を明らかにした米シンクタンク新アメリカ安全保障センターの調査報告書が、今月初頭に公開されている。
いずれにせよ、現代世界においてこれほどの国家戦略と大局的ビジョンを持って活動している国家は、中国の他には見当たらない。
このように、世界の覇権が米国から中国に移行しつつあるのが、21世紀前半における歴史的現象である。
即ち、パックス・アメリカーナからパックス・シニカへの大転換である。
こうした中国の急速な台頭に、米国が強い懸念と警戒感を抱くのは当然の帰結であろう。
米国の対抗戦略
東西冷戦が激化した1950年代、米連邦議会の特別委員会として、「現在の危機に関する委員会」(Committee on the Present
Danger)が設置された。
当時は、ソ連共産党政権との対決の為に、米国議会やメディア、一般国民など広範な分野で団結を呼びかけることを目的に創設されたものである。
冷戦終結後は休眠状態であったこの「危機委員会」が、最近になって復活し、中国共産党政権との対決姿勢を鮮明にしている。
危機委員会再起動の契機となったのは、昨年10月のペンス演説であった。
1946年のチャーチルの「鉄のカーテン演説」に匹敵する歴史的意義を持つ「2018年ペンス演説」により、世界は明らかに「新冷戦時代」に突入した。
中国をターゲットとしたこの新たな危機委員会は、組織としては今年3月末に設立され、実際の活動は4月から始まった。
戦略、外交、軍事などの専門家や元政府高官、さらに上下両院の有力議員達が加わった新たな危機委員会は、「中国は米国の存続を根幹から脅かす」として、断固たる対応を宣言している。
同委員会の会長には、保守系の戦略研究機関・クレアモント研究所所長を長年務めた長老的論客であるブライアン・ケネディ氏が就任した。
また副会長には、レーガン政権や先代ブッシュ政権の国防総省高官を務め、民間のシンクタンク「安全保障政策センター」の創設所長となったフランク・ギャフニー氏が就任した。
同時に発起人として、ジェームズ・ウールジー元CIA(中央情報局)長官、スティーブン・バノン前大統領首席戦略官、ダン・ブルーメンソール元国防総省中国部長、ジェーズ・ファネル元米太平洋統合軍参謀、クリス・ステュワート下院議員ら約40人の安全保障、中国、外交などの専門家が名を連ねている。
一昨年にトランプ大統領から解任されたスティーブン・バノン氏も発起人に加わっている事は、注目に値する。
中国に対する最強硬派とも言えるこの危機委員会の発足は、米国がいよいよ全地球規模の新冷戦に本格的に臨もうとする姿勢の表れでもある。
危機委員会の使命や活動目的などに関しては、以下のように打ち出している。
●本委員会は、中国共産党の誤った支配下にある中華人民共和国の実存的な脅威について、米国の国民と政策立案者たちを教育し、情報を与えるための自主的で超党派の努力を進める。
●本委員会の目的は、加速する軍事拡張や、米国の国民、実業界、政界、メディアなどを標的とする情報工作と政治闘争、サイバー戦争、経済戦争などから成る中国の脅威を説明することにある。
●共産党政権下の中国は米国の基本的な価値観である民主主義や自由を否定する点でもはや共存は不可能であり、米国官民が一致してその脅威と戦わねばならない。
●中国政権は東西冷戦中のソ連共産党政権と同様に米国の存在自体に挑戦する危機であり、米国側は軍事、外交、経済、科学、文化などすべての面で対決しなければならない。
●中国のこの脅威に対して米国側ではまだその危険性への正確な認識が確立されていないため、当委員会は議会やメディア、国民一般への広範で体系的な教宣活動を進める。
さらに危機委員会は、「現在の共産党政権下の中国との共存は不可能」と断じ、中国との全面的な対決を促し、中国共産党政権の打倒を目指すという基本方針を明確にしている。
今年3月に発足した危機委員会は、4月9日に米国議会内で初の討論集会を開いた。
この集会には、危機委員会の活動に賛同するテッド・クルーズ上院議員(共和党)も参加した。クルーズ上院議員は、2016年の大統領選では共和党候補としてトランプ氏との間で党大会で指名争いをした有力政治家である。クルーズ上院議員は、「今の米国にとって中国共産党政権こそが最大の脅威であり、危機である」と言明し、トランプ政権に対しても中国への対決姿勢をさらに強めることを促した。
またこの集会には、共和党内でなお強い影響力を保つニュート・ギングリッチ元下院議長も登場し、「中国は米国にとって実存的かつ思想的な最大の脅威であり、米国はその膨張を力を使ってでも抑え込まねばならない」と強調した。
米国ではこのように、今や「反中国」の旗の下、政界主流派が一致協力しつつある。
現在の米中貿易戦争は、こうした米国における「反中国」の大潮流のほんの一端に過ぎない。
グローバルな新冷戦は、これから本格化するであろう。新冷戦時代は、始まったばかりである。
一方、相変わらず右顧左眄を続ける我が国の安倍政権は、中国や習主席に対して御機嫌取りに勤しむばかりで、「一帯一路」への協力を申し出るなどの朝貢外交を繰り返している。
「一帯一路」に参加協力しようとする日本政府の対中外交は、「一帯一路」による「債務の罠」の犠牲にされた海外諸国に対する背信行為であるばかりか、同盟国の米国にも不信感を抱かせる行動である。
国際情勢を見誤ると亡国につながるという事を、我が国の政治家は肝に銘じるべきであろう。
「平成」が「冷戦終結後の時代」だったとすれば、「令和」はまさに「新冷戦の時代」であるとの認識が必要である。
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《財団概要》
名称:
一般財団法人 人権財団
設立日:
2015年 9月28日
理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)
定款(PDFファイル)
《連絡先》
一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413
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