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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」
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武力制圧まで秒読み段階の香港
中国軍による香港制圧を許すな
[2019.9.20]
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深圳市に集結した人民解放軍傘下の武装警察 |
PHOTO(C)REUTERS |
一歩も退かない香港民主派
香港では9月4日、林鄭月娥行政長官が「逃亡犯引き渡し条例改正案」を正式に撤回した。
だが、今回の条例改正案撤回については、香港では「遅すぎた」という評価が大半を占めている。
6月に条例改正案反対のデモが起こった直後に当局が法案を撤回していれば、事態は早々に鎮静化したに違いない。
しかし行政長官は、「凍結」あるいは「廃案」と言いつつも、「撤回」は拒否し続けた。
その為に状況は更に深刻化し、当初は逃亡犯条例改正案だけだったはずの問題が、2カ月余りの間に、「5大民主化要求」へとデモの内容が拡大していった。
民主派が掲げる5つの要求とは、
①逃亡犯条例改正案の撤回
②デモを「暴動」と見なす政府見解の取り消し
③デモ逮捕者の釈放
④警察の暴行を調査する独立委員会の設立
⑤民主的選挙で指導者を選ぶ普通選挙の確立
である。
そして今回ようやく実現したのは、①のみであった。
②や③や④の実現は極めて困難であり、⑤に至っては、共産党統治体制の変革に直結する要求である為、中国共産党としては絶対に受け入れられない条件である。
民主派側も、当局による「分断工作の罠」を警戒している為、5大要求項目の残り4項が受け入れられなければ、デモは鎮静化しない状況になっている。
民主派側の立場からすれば、要求が5分の1だけ通ったからといって、簡単にデモを収束させる事があり得ないのは当然と言えよう。
5年前の「雨傘運動」の際、民主派は行政長官の直接選挙を求めたが、当局による市民分断工作によって挫折したという苦い経験がある。
そのため彼らは、今回は決して同じ轍は踏まないよう用心しており、条例改正案撤廃が発表された後にも、抗議デモは終わらなかった。
一方、北京の中国共産党指導部にとっては、逃亡犯条例改正案の撤回という「最大の誠意」を示したにも関わらず、香港における大規模デモが際限なく長期化し続けるようであれば、問題解決の手段は「武力制圧」しか残らないという理屈になる。
この種の当局と市民側との微妙な解釈の食い違いが大きな悲劇につながる事態は、30年前の天安門事件の際にも見られた。
民主派の最終的要求は、完全な普通選挙の実現であるが、北京政府も香港政府もそれは絶対に容認不可能な要求である。
なぜなら、万一香港において反共政権が成立した場合、その影響は香港に留まらず中国全土に波及し、蟻の一穴から堤防が崩れるように、北京の共産党政権の転覆にまで繋がる可能性がある為である。
北京政府にとって、香港はあくまで中国の一部であり、共産党と対立する政権の樹立など決してあってはならない話なのである。
共産党指導部の香港情勢解釈
9月3日、国務院香港マカオ事務弁公室の記者会見において、楊光報道官は、香港デモと5大要求について「(民主派による)権力奪取」が目的であると断じ、「(西側諸国が黒幕の)カラー革命の特徴を備えている」と痛烈に批判した。
これが共産党指導部の見解だとすると、現在進行中の香港デモは、外国の敵対勢力の指導の下に香港政府の権力を奪取しようとする「反革命暴動」に他ならず、外患誘致罪および国家政権転覆罪ということになり、共産党指導部にとっては文句なしに武力鎮圧すべき対象となる。
また同日、習近平は、中国共産党の中央党校の秋季中青年幹部養成クラス開講式で講話を行った。
講話の中で習近平は、
「共産党の指導と、わが国の社会主義制度は揺るがしてはならない」
「我々は断固闘争し、闘争すれば必ず勝利する」
「直面する重大闘争は少なくない。経済、政治、文化、社会、生態文明建設、国防、軍地建設、香港・マカオ・台湾工作、外交、党の建設などの面にすべてあり、ますます複雑化している」
「闘争は芸術であり、闘争に長けねばならない」
などと、毛沢東語録からの引用を交えて、幹部候補生たちに闘争の重要性を訴えた。
今回の習近平の講話は、これまでに無い緊迫感があり、あたかも戦争準備の感があったと言われる。
「直面する重大闘争」の中に、「香港・マカオ・台湾工作」と具体的な名前を列挙していることからも、習近平が本格的に香港の制圧を決意しているものと見て良いだろう。しかも、外交や、党建設工作よりも前に挙げているところにも、その本気度が表れている。
我が国は対中制裁が出来るのか
中国人民解放軍による香港への武力介入の具体的な時期については、香港において収拾不能な状況が今後どこまで続くかによる。
例えば爆破事件など大規模なテロが発生した場合や、香港政府の統治能力に問題がある事態と判断された場合には、北京政府は軍を投入するものと予想される。
暴動鎮圧に伴う事態収拾および事後処理の方策については、中国当局が世界最高水準のノウハウを有している。
1989年に東欧諸国の社会主義政権が軒並み崩壊し去った一方で、中国の場合は、天安門事件で「反革命暴動」を完全に鎮圧した上、国内の言論や情報を完全にコントロールし、しかもそれ以降の国力増強も達成出来たという「成功体験」がある。
しかも、現在の中国は天安門事件の頃とは異なり、国際社会が多少制裁を加えてもびくともしないレベルの超大国になっている。
そもそも今日の世界経済は中国市場を抜きに回らないし、中国と交流の深いアジアやアフリカ諸国の多くは、中国当局が何をしようと対中制裁には応じないだろう。
また日本やEU諸国の企業も、たとえ一時的に対中制裁に参加したとしても、いずれ中国市場に戻って来ざるを得ないと、中国からは見られている。
かつて天安門事件の後、対中制裁を早々に解除して中国との経済交流を再開したのは日本であった。日本が制裁を解除すると、他の西側諸国も、先を争うように対中制裁を解除して中国との経済交流を再開した。中国にとってこの経験は大きいものであるが、日本政府の責任はもっと大きい。
中国側の予想では、今後中国に制裁を仕掛けて来るのは、最早没落しつつあるアメリカだけである。
中国の経済的・技術的・軍事的レベルは米国に匹敵しており、いずれ上回ると予想される。
今や中国内部では、「中国はアメリカなしでもやっていけるが、世界は中国なしではやっていけない」と言われるようになっている。
こうした中国が、諸外国の反応を気にしながら内政問題を決める事など決してあり得ないのである。
香港と台湾は、あくまで中国にとって内政問題であり、内政問題の一切を決定するのは北京の中国共産党指導部である。
米中対立も長期戦となれば、潜在可能性の大きい中国の方が有利になる。
習近平が「新長征」のスローガンを掲げ、対米長期戦の構えを見せている事からも、中国共産党指導部の本気度がよく分かる。
逆に、もし北京政府が香港のコントロール不能に陥った場合、習近平政権の権威失墜に繋がり、現指導部に対する国内の批判が高まる事態は避けられない。
政敵である江沢民派は、習近平の追い落としを虎視眈々と狙っている。
江沢民派は共産党指導部から一掃されたかに見えるが、これまで江沢民派らによる習近平の暗殺未遂は9回にも及んでおり、隙あらば即失脚という危険な状態は変わらない。
こうした状況において、習近平にとっての選択肢は、強硬策しかあり得ない。
現在北京政府が考えているのは、香港武力制圧の具体的戦術と軍部隊出動のタイミングである。
今後、中国軍部隊が香港を制圧した場合、我が国は、果たしてどこまで実質的な対中制裁が出来るだろうか。中国には宥和的な安倍政権の真価が試されることになる。
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《財団概要》
名称:
一般財団法人 人権財団
設立日:
2015年 9月28日
理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)
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《連絡先》
一般財団法人
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