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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













中国の人権弾圧と覇権主義を静観する日本政府


今日の香港は明日の日本


[2020.12.14]




香港の裁判所前で記者会見する民主活動家  左から周庭氏、林朗彦氏、黄之鋒氏
PHOTO(C)AFP


黄之鋒氏や周庭氏らの実刑判決に抗議する


 去る12月2日、香港において拘束中の民主活動家・黄之鋒氏、周庭氏、林朗彦氏の公判が開かれ、黄氏に13カ月半、周氏に10カ月、林氏に7カ月の禁錮刑が言い渡された。

 罪状は、昨年6月21日に逃亡犯条例改正案に反対する警察本部包囲デモを扇動した「無許可集会扇動罪」である。

 当時の事情をよく知る在日香港人団体「香港の夜明け」によれば、「当日3人は確かに現場にいたが、集会を中止させるような言動が見られた。3人はリーダーでもなければ、他人を扇動する行為も無かった」として、3名の無罪を訴えている。

 問題となった昨年6月21日の当日、周庭氏はメガホンを手に持ってはいたがスピーチはしていなかった。また、黄之鋒氏はメガホンは使ったが、現場に続々と人が集まる中で懸念を抱き、人々に抑制を促していたという。

 また当時、ネット上で黄之鋒氏とやりとりしていた人達は、黄之鋒氏の弱腰な態度に怒り、後に「お前のせいで集会が続けられなくなった」などといった批判を黄之鋒氏に浴びせていたという。

 様々な状況証拠や証言からしても、およそ黄之鋒氏らが無許可集会を扇動した首謀者とは考えられない。

 香港当局は、イスラエルのハッカー会社を使って黄之鋒氏のスマートフォンに残っていた記録を探し出すなどの違法な手段を通じて入手したスマホ情報を証拠として、黄之鋒氏が集会を組織したと断定したが、黄之鋒氏によれば、仲間から送られてきたメッセージを転載したに過ぎなかったという。

 今回の案件を担当した王詩麗裁判官は、「事件の規模、人数、時間と地点」を考えて3名の判決を下したと述べているが、自然発生的に人数が膨れ上がったデモの責任の全てをこの3名に押し付けるというのも不自然である。

 裁判においては、被告3名が過激な行動や暴力を扇動したという明確な証拠すら示されておらず、仮にこれが通常の民主国家における裁判であれば、「疑わしきは被告人の利益に」という「推定無罪」の原則に基づいて「証拠不十分で無罪」になるような事案であった。

 しかしながら、独裁体制下の中国や香港においては、三権分立の原則も無ければ「法の支配」の概念も無く、「疑わしきは共産党の利益に」の原則が貫徹されている。

 中国共産党にとっては、言論を武器に「自由」や「人権」を唱える知識人の存在は大きな脅威である。中国本土においては、習近平体制になって以降、人権派弁護士や知識人に対する身柄拘束や弾圧が執拗に続けられている。

 こうした中国本土と同様の状況が、香港においても見られるようになってきた。

 今回実刑判決を下された3名は、いずれも外国語が堪能で、西側諸国の知識人や政治家達とも連携し、事実上、香港政府を追い詰めてきた。黄之鋒氏や周庭氏らは、海外に渡航するたびに現地の議員や著名人と意見交換したり、記者クラブで会見を行うなど、幅広く活動をしてきた。

 米国における香港自治法の制定をはじめ、香港をめぐる一連の制裁法案に、彼等の活動が影響を与えた事は間違いない。黄之鋒氏や周庭氏らのように、理性的に思考して、言論を武器に情報発信するインテリ活動家達は、体制側からすれば脅威の存在なのである。

 その為、中国共産党や香港政府にとっては、黄之鋒氏、周庭氏、林朗彦氏らは、如何なる理由をデッチ上げてでも実刑にしなければならない危険分子であった。

 当然の事ながら、今回の3名の判決に対しては、国際社会から厳しい批判が浴びせられている。

 米国のマイク・ポンペオ国務長官、米連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長、台湾の蔡英文総統、英国のドミニク・ラーブ外相などの各国の首脳達が、「判決は遺憾」として自由を求めて闘う香港市民への支持を表明している。

 これに対して中国外交部は、
「内政に干渉しないよう求める」
「香港は法治社会であり、犯罪者の法的責任を追及することは誰かが中傷できるものではない」
「自由や民主という名目で香港問題や中国の内政に干渉することをやめ、意図的な中傷と非難をやめるよう求める」
などと、前時代的な理屈を持ち出して反駁している。

 だが、香港に最も必要なのは「法治主義」、すなわち公正なルールと独立した司法である。これは国際社会がコミットすべき人権侵害に関する普遍的問題であり、内政干渉の対象外である。

 今後、こうした中国共産党の非道が罷り通る状況に対して、日本政府が静観を続け、何一つ抗議の声を上げないのであれば、やがて日本社会のルールも徐々に中国の基準へと置き換えられてゆくであろう。



共産中国への忖度外交を続けてきた外務省


 去る11月24日、中国の王毅外相と茂木敏充外相が会談し、直後の記者会見で王毅外相が、「最近、一部の正体不明の日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島)のデリケートな海域に侵入している。中国はそれに対して必要な対応をするしかない。この問題に関する中国の立場は非常に明確で、われわれは今後も引き続き中国の主権を守っていく」などと述べた。

 これは、中国による尖閣諸島の領有を宣言したに等しい発言と言える。しかもそれに対して、茂木外相はその場で何も反論をしなかった。

 この事は中国で大きく報道され、王毅外相は中国国内ではあたかも凱旋将軍のように称賛を浴びているという。一方、日本国内ではこの茂木・王毅会談について、野党もマスメディアもほとんど取り上げていない。

 だがこの問題は、「桜を見る会」問題や「モリカケ」問題などとは比較にならないレベルの大問題と言ってよい。

 最近、中国は尖閣諸島の領有権を主張する際に、「四つの原則的共通認識」という概念を強調するようになった。

 王毅外相は11月26日の記者会見では、「(日中)双方が『四つの原則的共通認識』を堅持することが第一の希望である」と発言している。

 また今年5月には、中国外交部の趙立堅報道官が、「我々は日本側に『四つの原則的共通認識』の精神を遵守し、釣魚島問題において新たな揉め事が起こる事を避け、実際の行動で東シナ海情勢の安定を守るよう要求する」と語った。

「四つの原則的共通認識」とは、過去に日中間で交わされた四つの外交的合意、即ち、1972年の「日中共同声明」、78年の「日中平和友好条約」、98年の「日中共同宣言」、2008年の「日中共同声明」に謳われた「原則」についての日中間の共通の認識という意味である。

 具体的に言うと、中国にとって「四つの原則的共通認識」とは、「日本は尖閣諸島に関する主権を一切主張しない」という「原則」であり、日中間には既にその事についての共通認識があるものと中国側は解釈している。

 つまり尖閣問題に関しては、日本国内では単なる先送りの「棚上げ」問題と解釈されていた事柄が、中国では日本側の主権放棄と解釈されてきたのである。

 王毅外相の発言の意図は、「日本はこれまでの日中間の四つの外交的合意に従って、尖閣諸島の主権を公式に放棄せよ」ということであり、「これが日中関係の第一の基本原則だ」と釘を刺しているのである。

 そして、日本の外相がこれに反論しなかったということは、「四つの原則的共通認識」に関する中国側の解釈を日本政府が完全に認めてしまった事を意味する。

「チャイナスクール」と呼ばれる親中派外務官僚を中心とする日本の外務省が、過去半世紀近くにわたって事実を隠蔽し、国民を騙し続けてきたツケがいよいよ回ってきたのである。

「民は知らしむべからず、依らしむべし」を旨とする官僚の国民蔑視と隠蔽体質は周知の事実であるが、こと外交問題に関しては、「モリカケ」や「桜を見る会」どころの騒ぎでは済まされない。

 条約や宣言文の解釈が互いに異なった状態では、国交そのものが持続不可能である。

「日中友好」と「尖閣領有」とは、もともと両立不可能な命題であった。

 我が国にとって、このまま日中関係を継続する事は、必然的に尖閣に関する主権は放棄せざるを得なくなる事を意味する。

 経済分野においても、対中投資は結果的に日本からの技術流出と日本国内の産業空洞化をもたらしただけで、我が国にとっては百害あって一利なしであった。

 米中関係の「デカップリング(切り離し)」が進行している現在こそ、日中関係の抜本的見直しが必要であり、それが国政にとっての最重要課題でもある。

 その為には先ず、共産中国への忖度外交を続けてきた日本の外務省の大改革が不可欠であろう。

 その上で、対中「国交断絶」および台湾との国交回復を視野に入れた外交戦略のパラダイムシフトが求められる。

 そもそも「人類史上最大の犯罪集団」であり「人類共通の敵」でもある中国共産党との「友好」関係などあり得ない事であった。

 外交の誤りは国を亡ぼす。

 過去の歴史において、覇権主義国家や人権弾圧の独裁国家は必ず滅亡してきた。ソ連や東欧などが典型例である。

「戦略的互恵関係」や日中関係「新時代」などという美名に隠れた対中拝跪外交は、やがて我が国を亡国の淵へと追いやるであろう。

 中国がその本性を露わにし始めた今こそ、中国との似非「友好」関係を清算し白紙に戻すべき時機であると思われる。









《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
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