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FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」
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「共同富裕」政策は「共同貧困」への道
市場経済から統制経済へと逆行する中国経済
[2021.9.10]
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中国で社会現象となっている躺平主義 |
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「共同富裕」の実態とは
習近平は7月1日の中国共産党結党百周年記念の大会で、「小康社会の全面的実現」(そこそこ豊かな社会)の目標が既に達成された事を宣言し、建国百周年の2049年に向けた目標として、「共同富裕(全員が豊かな社会)の実現」を強く打ち出した。
これは、鄧小平の「豊かになれる者から先に豊かになる」という「先富論」の時代は終わり、これからは習近平主義で行くという宣言でもあった。
習近平は、社会主義本来の原則に基づいて、鄧小平以来の「社会主義市場経済」から「社会主義統制経済」へ、「先富論」から「共同富裕論」へのパラダイムシフトを目指している。
「共同富裕」という目標は、2017年10月の第19回党大会で提唱され、2020年秋の五中全会で浙江省を先行モデル区に指定して2035年までに「共同富裕」を実現することが提起されていたが、その段階では「共同富裕」の為の具体的な政策は無かった。
「共同富裕」実現の具体的な政策が打ち出されたのは、今年8月17日の中国共産党中央財経委員会第10回会議であり、その場において習近平は「三次分配」を提唱した。
「共同富裕を実施する手段として、一次分配(=市場メカニズムによる分配)、二次分配(=税制、社会保障による分配)、三次分配(=寄付、慈善事業)を協調させて基礎的な制度を準備する」というものである。
習近平は、「共同富裕は社会主義の本質的要求であり、中国式現代化の重要な特徴である」とし、「高過ぎる収入は合理的に調整し、高収入層と企業に、より多く社会に報いることを奨励する」として、寄付や慈善事業などの富の分配を提唱した。
「三次分配」である寄付・慈善事業は、形式的には、富裕層や企業が自発的に行うこととされている。
しかしながら、実態は共産党による強制に他ならず、拒否すれば「党の方針に逆らった」と言い掛かりを付けられて、粛清の対象にされてしまう事になる。現在の習近平体制下では、富裕層にも企業にも自由意志は存在しない。
習近平が唱える「三次分配」政策が、富裕層や大企業から私有財産を堂々と収奪する為の口実に過ぎない事は、誰の目にも明らかである。
党中央財経委員会第10回会議の内容が公表されて以降、多くの富裕層や企業家達は、悪夢の毛沢東時代の再来を懸念している。
この会議直後、大手IT企業のテンセントは、500億人民元(8500億円)を拠出して、農村振興、低所得者への扶助、農村医療改革などの領域に寄付する事を発表した。これまでやって来なかった事を、党の決定後に突然やり出した場合、自由意志で自発的にやったとは誰も思わないであろう。
中国の貧富の格差は激しく、中国の上位2割の富裕層の可処分所得の平均は下層2割の可処分所得の10倍以上であり、貧富格差の指標であるジニ指数は0.46~0.47で、暴動騒乱多発の警戒ラインである0.4を大きく超えている。
この状態で共産党が社会秩序を維持し続けるには、大衆の敵意を富裕層に向けさせるように煽動し、格好のスケープゴートを提供する必要があった。
民衆の貧富拡大に対する不満に加え、最近の経済停滞による当局への不信感が高まる中、いよいよ本格的に大企業や富裕層がスケープゴートにされ始めた。
統制経済に回帰する中国経済
中国政府は、昨年11月に金融企業アント・グループの新規株式公開を中止に追い込んで以降、BATH(百度、アリババ、テンセント、ファーウェイ)などの大手IT企業に対する弾圧を強化している。
先ず標的にされたのは、浙江省の杭州に本社を置く大企業アリババであり、アリババは今年になって独占禁止法違反で約182億元(約3100億円)もの罰金を科された上、資産売却も迫られた。
アリババ創業者のジャック・マー前会長は、昨年来、「時代錯誤的な政府規制が中国のイノベーションを窒息死させる」と激しく共産党を批判していた。これが習近平の逆鱗に触れたとも言われる。
この事件が、さらに杭州市書記・周江勇をはじめ浙江省高級官僚らの失脚につながった事も考えると、習近平による「共同富裕」政策は、政敵である上海閥・江沢民派に対する粛清も兼ねており、習近平としては一石二鳥ということになる。
また今年4月、アリババ、テンセント、百度、京東、バイトダンスなど各分野の大手IT企業34社が規制当局に呼び出され、行政指導を受けるとともに、1カ月以内に全面的な点検を実施し、徹底した問題解決を図るよう求められた。
さらに各社は、中国政府の意向に完全に沿い、独占禁止法違反の行為をしない事や、政府の指導を全面的に受け入れるとする誓約書を提出させられた。
中国政府は、中国人民の個人情報データを「国家の主権と安全に関わる存在」と見做している。
そのため、中国企業を通じて「国家の安全」に関わるデータが海外に流出する事を防止する目的で、大量の個人情報データを保有するハイテク企業やIT企業の海外証券市場への上場を厳しく監督しようとしている。
今年、中国政府のネット規制当局は、米国に上場した中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)などネット企業3社に対し、国家安全上の理由で審査を行った。さらにその後も、ユーザー数が100万人超の中国企業が海外上場する際に当局の審査を義務付けた。
当局による経済統制はIT企業に留まらない。
中国政府は本年7月24日、学習塾に対し「教育サービス企業は非営利団体にする」という厳しい規制を設けた。
教育費の高騰が少子化の原因の1つでもある為、営利目的の学習塾の規制に乗り出したという側面もあった。
このように共産党政権が各分野で規制を強化する理由は、「共産党の指導」が目的化している為である。
日本や欧米諸国においては、政府の企業に対する規制があくまで「消費者保護」を目的としているのに対して、中国の場合は「共産党の指導」それ自体が目的となっている。
建党以来、一貫して中国共産党には「営利は悪」という価値観が根強くあり、「指導」に際しては、「営利に走る悪徳商人を糾す」といった使命感が強く働いているのである。
「共産党の指導」による「共同貧困」へ
習近平体制下の中国では、共産党が独裁支配する社会主義国家であるという原則への回帰、さらに言えば毛沢東主義への原点回帰が顕著である。
現在習近平は、鄧小平以来の「社会主義市場経済」から「社会主義統制経済」への大転換を実行しつつある。
その意図が如実に示されたのは、2018年の「改革開放40年を祝う記念式典」の習近平講演であった。講演で習近平は、「あらゆるものに対する党の指導を堅持する」と述べ、党主導で改革を進める方針を強調した。
「改革開放40年を祝う記念式典」という場において、わざわざ「改革開放」とは全く真逆の方針を打ち出したのは、習近平の政治的パフォーマンスであり、「もはや鄧小平の時代は終わった」事のアピールであった。
現在行われている様々な分野の統制や規制の強化は、この習近平演説の「あらゆるものに対する党の指導を堅持する」という方針に沿ったものである。
中国共産党による支配は、国の上層部から社会の底辺にまで張り巡らされており、あらゆる自治体、国有企業、学校には「共産党委員会」が設置されている。
またファーウェイのような民間の大企業にも党委員会が置かれており、日系企業を含む外資系企業にも党委員会は広がっている。民間企業には党委員会が無いところもあるが、党員が3人以上いる民間企業は党委員会を設立する事になっている。
中国共産党は、主要企業内部に多くの共産党員を送り込み、経営幹部らに国家目標達成に向けた事業の方向付けを求めている。
また一部のケースでは、党に従順でないと判断された企業を国有企業に吸収させ、完全に支配下に置いている。
このように、今日の中国では、様々な産業分野で統制化の動きが進行している。
今や中国全土の全ての企業が、当局の意向一つで、突然廃業の危機に追い込まれるというリスクを常に抱える事になった。
必然的に、今後中国に進出する外国企業は激減する事になる上、既に中国に進出していた外資企業も撤退を検討するようになる事は確実である。
それを承知で「共産党の指導」を強行しているのであれば、「もはや中国経済は外国企業に頼る必要が無くなった」と習近平が判断したという事である。
2021年3月、党理論誌「求是」は、「自力更生は中華民族が自立して世界の中で奮闘する基点である」とする習近平の演説を掲載した。
「自力更生」という言葉は、1945年8月に延安で毛沢東が掲げた中国共産党のスローガンで、「他国の力に頼らず、自らの努力で困難な状況を克服する」事を意味する。
ただし、鄧小平が改革開放政策を開始した1978年以降、「自力更生」は死語と化していた。
しかしながら、現在の中国共産党は習近平の指導下で、対外協調の鄧小平路線を否定し、毛沢東時代への回帰を志向している。
かくして40年以上もの間、ほとんど使われてこなかった「自力更生」の語を、今年になって習近平が甦らせた。
今や、自らを毛沢東の偉大な後継者として歴史に名を残したい習近平が、大躍進政策や文化大革命を模倣して、富裕層や企業家達をスケープゴートに大粛清を実行する段階へと中国社会は突入しつつある。
このまま習近平独裁が長期化するならば、やがて毛沢東時代の計画経済や鎖国政策が再開される可能性もある。
歴史は繰り返す。
かつてのソ連や東欧、毛沢東時代の中国などの社会主義諸国は、貧富の差を是正しようとして統制経済を試みたが、結果的に貧困者が急増し、人々の生活は一段と苦しくなった。
現在の中国も、市場経済から統制経済へと転換すれば、民間企業の活力は失われ、経済は停滞し、富裕層は財を失い、中間層は貧困層に転落し、貧困層はさらに困窮してゆく事になるだろう。
今後の中国は、「共同富裕」どころか「共同貧困」に向かうしかない。
今日に至るまで中国共産党の正当性は「経済成長」だけであった。
中国国民は、自分達の生活が豊かになる限りにおいて、自由と引き換えに一党独裁支配を容認してきた。
ただし、こうした経済成長は、いずれも鄧小平以来の「社会主義市場経済」の下で実現されてきたものであった。
しかしながら、今後統制経済によって中国経済が停滞し、豊かさを実感できなくなった時、中国国民の不満は、共産党の一党独裁体制を根底から揺るがす事になるだろう。
そして、そうした動きはすでに始まっている。
中国からの脱出を希望する中国人エリート層
最近、多くの中国人留学生が高額なチケットを購入して米国への出国を希望している。
とりわけ年度替わり前の先月には、中国の空港の出国ロビーには長蛇の列ができ、上海浦東空港では、米国やカナダへのフライトのチェックインの為に、学生達の列が1キロメートル以上の長さで続いていたという。
あたかもアフガンからの出国を求める大量の難民で混乱するカブール空港を彷彿とさせる光景である。
しかしながら、中国と米国を結ぶ直行便は週20便以下で、米国行きの航空券の価格も上昇し、10万元(170万円)の超高価格の航空券もあるという。
米国への渡航費が10万元にも関わらず、中国人留学生達の米国への出国が止まらないのが現状である。
中国当局は、今年の初めから、海外旅行や海外訪問のパスポート申請を厳格化した。さらに7月30日には、中国入国管理局は、「緊急性や必要性が無い限り、誰も出国できない」と発表した。
そのため、海外への出国がますます困難になっている。
そうした中、中国からの出国を希望する人にとって、留学は唯一の道である。
中国当局が依然として留学生に海外渡航を認めているのは、中共イデオロギーを海外に輸出したいという目的の為である。
北京の政治評論家・華頗(かは)氏は、「大紀元時報」の取材に対し、
「米国への人々の殺到の最大の理由は、中国の政治状況が深刻化し、一部のエリート層を(迫害の)ターゲットにしているからである」
「米国に出国する人のほとんどはエリート層で、中国の政治状況に震え上がり逃げ出したくなっている。 そこで、これ以上ゲートが強化されると逃げられなくなることを恐れて、出国できると直ちに10万元の航空券を使ってでも米国に駆けつけるのである」
と語っている。
もし華頗氏が述べたように、現在の中国社会において、エリート層が迫害される段階まで来ているのであれば、すでに習近平体制による「文化大革命」の再現が始まっている事を意味する。
当局が出国を認めたとしても、170万円も出して出国するような人達は、二度と中国には戻って来ないであろう。
中国共産党がどのように世論を誘導しても、実際には大多数の人々が現在の状況が非常に深刻である事を熟知しており、それぞれが自分自身を守る為に行動しているのである。
中国社会に拡がる躺平主義
現在中国国内では、「躺平(タンピン)主義」「躺平族」という新しい造語が流行語となっている。
「躺平」という言葉はもともと「寝そべる」という意味であるが、「躺平主義=寝そべり主義」とは、「頑張らない、競争しない、欲張らない、最低限の消費水準の生活に満足し心静かに暮らす」事を意味する。
中国社会は、数年前までは経済的にも問題は無かったが、現在では若年層を中心に「躺平主義」がブームとなり、一種の「世捨て人」が増加している。
この「寝そべり主義」は、今や多くの若者達にとって流行の生き方となっており、「躺平族」の大量出現が社会現象となっている。
彼等は、「寝そべりは賢者の行動である」という。
不毛な競争に巻き込まれる事を拒否し、給料の為に奴隷の如く働くのはやめ、家も車も買わず、結婚も子育てもしない。消費を抑えることで最低限の生活を維持し、他人から利用される事も拒否する。それが「寝そべり主義」であり、自分を大事に生きる事である、という。
一見、1960年代後半の米国におけるヒッピー運動に似ているが、ヒッピーとは異なり、躺平族は政治的主張は一切しない。
中国は伝統的に「老荘思想」の国でもあり、「無為」の哲学が受け容れられ易い素地がある為、こうした社会現象が起きても不思議ではない。
ただしこのような事態に対して、中国当局が危機感を抱いている事は間違いない。
北京の外交筋は、「消費意欲の低迷が経済に与える影響も含め、寝そべり主義は習指導部にとって深刻な脅威になり得る」と語った。
しかしながら、「世捨て人」と化した躺平族の人々は、体制批判をしているわけでもなく、また何かを主張しているわけでもなく、ただ単に何もしないだけである。
当局としては手の付けようがないであろう。
今や習近平をはじめ共産党指導部は、米国に肩を並べる「強国」を目指し、「中華人民が一丸となって奮闘すべき時」と国民を煽動している。
それに対し「寝そべり主義」を続ける事は、習近平が掲げる強国路線への無言の抵抗と言える。また、多くの人々が広場や路上で寝そべっている光景は、「ダイ・イン(die-in)」のデモを彷彿とさせる。
躺平族の人々が何も発言しないとしても、その行動自体によって、共産党独裁の社会体制に対し「NO」を突き付けている事は確かであり、躺平族の存在自体が、中国社会の抱える大きな矛盾を象徴している。
ある意味で躺平主義は、ガンジーやキング牧師の「非暴力」「非協力」による抵抗運動に通じる部分もある。
躺平族が、誰に言われるでもなく、自然発生的に中国社会の広範な地域に拡大している事も注目に値する。
もしそこに有能な煽動者が現れれば、中国社会全体が転覆しても不思議ではない状態にあると言えよう。
ジニ指数0.46~0.47の中国社会では、いつ革命や暴動騒乱が発生してもおかしくないのである。
エリート層が続々と国外脱出を図り、若者層が寝そべり続けるような社会に、明るい未来があるとは思えない。
中国共産党の支配を拒絶する中国国民が急増し、共産党独裁体制が根底から揺らぎ始めている事は事実である。
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《財団概要》
名称:
一般財団法人 人権財団
設立日:
2015年 9月28日
理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)
定款(PDFファイル)
《連絡先》
一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413
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